記事概要 教員の視点での、東京都内の私立中学校の評価基準を解説します。私立中学校受験や私立学校の教員になりたい人の参考になれば幸いです。今回は、私立学校を紹介する雑誌や学校の特色紹介でよく見る「私立学校のうたい文句」について説明します。
参考にしてはいけない私立学校の情報(前回記事)はこちら
入ったら伸びる学校
私立中学校受験に関する雑誌を読んでいると、「入ったら学力が伸びる東京都内の私立中学校ランキング」というような記事を目にしたことがあるのではないでしょうか。何を基準にしているかはよくわかりませんが、「入ったら伸びる学校」なんてもんは存在しません。中学校入学時と高校卒業時の偏差値を比べて、偏差値が上がっているということはあるでしょう。しかしこれの原因の9割は、本人の努力と才能です。数字だけ見れば学力が上がっていると思うかもしれませんが、正確に言えばこれは「勉強の才能がある子どもの学力が、時間とともに上がっていった」というだけです。入ったら伸びるといわれる学校の、有名な大学への進学率は高いかもしれません。しかし確かなことは「入ったら学力が伸びる」ではなく、「学力が伸びる子どもが入学している」というだけです。結局のところ、勉強は才能と努力であるということです。
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私立学校に関わる人は、私立学校をけなさない
なぜ変なうたい文句が生まれるかと言えば、私立中学校受験の熱が冷めると私立学校の関係者は困るからです。私立中学校を受験する人が減れば、私立学校教員、塾業界、出版業界など私立中学校受験に関わる人全体の収入が減るからです。私立中学校受験をする人が多いことにより、教育に関与する人の懐が潤うので、「この学校は絶対にダメ」なんてことは言いません。私立学校受験を扇動することで得をする人はたくさんいますが、けなして得をする人はあまりいません。ゆえに、なんとか中学校受験の波を途切れさせないためにも、変なうたい文句などが生まれてしまうのです。
独自路線をいく英語教育
特に女子校に多い傾向ですが、独自の英語教育を強調しているような私立中学校は、あまりあてにしないほうがいいでしょう。
そもそも、英語であれ中国語であれフランス語であれ、言語を習得するにはまず、「言語を聞く」量を圧倒的に増やさなければなりません。これは歴史が証明しています。皆さんが母親のおなかから生まれてからの、言語との最初のかかわりは「聞く」でしょう。赤ちゃんのときは「おぎゃあ」と泣くばかりでしょうが、これは言語を「話す」にカウントしません。生まれたときから「日本語をしゃべることならできた」「ひらがなを読むことだけうまかった」「毎日日記を書いている」なんて人は絶対にいないでしょう。「聞く」ことのまえに「話す」「読む」「書く」の言語活動を行うことができた人はいないはずです。すべての人類は、言語を習得する際に「聞く」から始めているのです。
「聞くから始める」という鉄則に従わず、独自路線の英語の指導法を実施しているような学校は、参考にならないでしょう。大学入試の問題の傾向が変わることにより、ライティングやスピーキングの能力を求められることは事実ですが、まず「聞く」というインプットなしにはアウトプットはうまくいきません。「大学受験のためにスピーキングを重視した指導」「中学生のうちからライティング指導を積極的に行う」なんてことを強調するような私立中学校には、受験しないほうがよいでしょう。
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