東京生まれの東京育ちの必読書『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』 麻布競馬場

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『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』 麻布競馬場

著 麻布競馬場 集英社

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始めに 

 小学校の社会科で、全国47都道府県と県庁所在地の名称を暗記させられましたが、東京都の「東京」がどこなのかをずっと不思議に思っていました。

 歴史をさかのぼると、1943(昭和18)年に「東京都」となる東京府には、35区からなる「東京市」があり、東京市が府庁所在地でした。第二次世界大戦後、東京35区は東京22区(のちに23区)に再編されましたので、東京23区が都庁所在地ということになります。なお、東京都には八王子市など、26の市が今もあります。

 さて、「東京」という語を聞くと、どのような姿が思い浮かぶでしょうか。日本の首都、大都会、東京タワー・スカイツリー、銀座・新宿・渋谷、超高層ビルなど、華々しいイメージでいっぱいになるかもしれません。けれど、大部分の東京都民は、そのような華やかな舞台とは無縁の生活を送っています。多くの東京都民の住居や部屋からは、東京タワーは絶対に、永遠に見られません。

概要 

 
 『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』は、東京都の周辺部に暮らす都民にとっての「東京都心ガイドブック」と呼ぶことのできる本です。そこには、見たことも聞いたこともない飲食店や料理名がまざまざと描かれます。麻布競馬場さんの実体験なのか虚構なのか、想像がつきません。東京から離れて暮らす人であれば、その思いはより強くなるでしょう。

 また、登場人物は、高学歴や高収入や東京都心、できることであれば港区での華やかな生活を追求します。そして、タワーマンションに住むことを目指します。しかし、一部は叶っても、全部はなかなか叶いません。そもそも、東京都の周辺部に暮らす都民の大部分は、タワーマンションの住人になることなど考えないかもしれません。

 さらに登場人物は、30歳を人生の区切りと考えてか、さまざまに考え、迷い、行動し、時に挫折感を味わいます。けれど、大谷翔平氏であればともかく、30歳までに思いどおりの人生を歩むことができる人は何人いるでしょうか。目標が高ければ高いほど、実現は難しいことでしょう。

まとめ

 
全25話からなる短編集で、一日で難なく読み切ることができます。東京都心で日夜繰り広げられる華やかな世界を文字で味わうことができます。その一方で、登場人物の挫折には、同情を禁じえません。漫画化もされたようですが、寝入る前に一話ずつ読むことに最適な一冊です。

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