記事概要 東京都23区間の学力差が縮まらないことについて、区の資金と学校の施設・設備の点から解説していきます。今回は東京都の公立学校では当然のものとなってきた「エアコン」について解説していきます。
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公立学校の施設改修と環境整備
東京都内の公立小中学校の施設や設備の更新や修繕(設備投資)に充てる資金は、学校が区市町村立ということで、それぞれの区市町村の予算から捻出されます。となると、税収や予備費が十分にある区市町村や、公立学校の数が少ない区市町村では、公立学校に対して使えるお金が多いわけです。
そして、教育に対して使えるお金(教育費)が多いと、子どもが勉強しやすい環境が整うだけでなく、教員にとっても授業や活動がしやすい環境が生まれるということです。つまり、「この地域で働きたい」と思う教員が増え、人気が上がることにより、力のある教員が増えるという好循環が生まれるということです。逆を言えば、教育費の少ない区市町村に、教員は魅力を感じにくいです。今回は、「エアコン」について解説していきます。
東京都内の公立学校のエアコンの普及率と現状(2022年現在)
普通教室の冷房化
東京都では熱中症対策もあり、ここ10年ほどで、生徒が生活する教室のエアコン普及率はほぼ100%です。しかしながらエアコンの設置にも、区市町村ごとの経済力の差が出ます。たとえば、家庭科室や理科室、美術室、音楽室などの特別教室には、エアコンが整備されていない市区町村(学校)もあります。特別教室にエアコンがあるかどうかは、区市町村が公立学校にいかにお金を割いているかの基準になるでしょう。夏季や冬季の災害時に避難場所として利用するために、体育館にエアコンや暖房機能のある機械を備え付けている場合もあります。
加えて、エアコンの管理方法にも種類があり、各教室のスイッチで温度を操作するものと、「集中管理」という、職員室や事務室が全教室のエアコンの温度を操作しているものがあります。集中管理式のエアコンでは、生徒がエアコンを操作して悪さをするようなことはほとんどできません。学校一つとっても、教室や階によっては日の当たり方が全く異なります。したがって、集中管理式の学校では、特定の教室だけ暑いということが生じることがあります。
全館冷房
教室にエアコンがあるか云々の話ではなく、学校丸ごと涼しくするという「全館冷房」の学校があります。全館冷房の公立学校は、ここ20年ぐらいにできた新設公立学校によく見られます。公立学校は災害時の避難場としても利用されるので、学校内の積極的な冷暖房の整備が進められています。
全館冷房とは、言ってみればデパートのようなもので、夏季であれば、校舎に入ったとたんに全館冷房の学校であることがわかります。廊下もどこもかしこも涼しく快適です。革命的な涼しさです。しかし、導入に莫大なお金がかかるので、新設校でない限り、公立学校で全館冷房を導入することはまずありえないでしょう。普及率も1%にも満ちません。
東京都の公立学校のエアコン事情と格差
都市熱のひどい東京都では、子どもが快適に勉強するためにも、エアコンは必須でしょう。都内の公立学校では、普通教室のエアコン設置率はほぼ100%なので、学習環境という点では問題はないでしょう。しかし、美術や音楽や技術はそれぞれの特別教室で、また、理科は理科室で、少人数指導を実施する数学や英語では空き教室で授業を行うことが多くあります。
そこで、特に実技教科を専門とする教員が、特別教室などにもエアコンなどの設備が整った学校で勤務したいと思うのはやむを得ないことでしょう。サウナのように暑い特別教室で指導する教員が、エアコンのある普通教室で指導する教員をうらやんでしまうのも、無理もありません。結果として、お金のある区市町村の公立学校に、指導力のある教員が集まり、その薫陶を受けた生徒の成績が向上する、つまり、「東京23区の学力差は縮まらない」という現状があります。
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