子どもに多方面への興味を持たせる良書 『世界史を大きく動かした植物』

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世界史を大きく動かした植物

PHP研究所 著 稲垣 栄洋

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概要

 人は植物なしに生きることができません。「人類繁栄の背後には、必ず植物がある」と言っても過言ではありません。それほど、歴史の背景には植物が欠かせません。本書は、植物を歴史的な観点から紹介した作品です。人が植物を育てているのか、否、植物が人間を育てたのか。答えは本書の中にあるかもしれません。

 「サトウキビが奴隷を増やす」「トウモロコシは宇宙からやってきた植物」「有毒植物として扱われたトマト」「ジャガイモは『悪魔の植物』というレッテルを貼られてしまった」「コロンブスは、アメリカ大陸で発見したトウガラシを『ペッパー(コショウ)』と呼ぶのである」。インパクトのあるこれらの文言に嘘、偽りはありません。『なんだそれ?』と思ったあなたは、いつのまにか本書の虜になるでしょう。

魅力

 様々な方面の学問への興味を持たせる本として、『世界史を大きく動かした植物』の右に出る著書はないのではないか、と思えるような作品です。世界史や社会科としての知識はもちろん、植物の話として生物及び理科、植物の育成には技術科の知識も関係しており、桜のテーマで日本史について解説し、それぞれの植物の栄養素の点で家庭科の内容にふれ、植物を表す漢字がどのように完成されていったのか、地政学的観点から植物が社会にどんな影響を与えたかを語り、無論、経済学的なことも説明し、国家の形成などについて人文科学の点から論を展開し、色彩学的な観点から動物はどのように食べ物を見ていたかを紹介しています。

 子どもにとっては多少難しい本かもしれませんが、これを読んで理解することができるような学生は、いずれかの学問的な方面で知的好奇心をくすぐられること間違いなしです。

感想

 個人的には、ここ1年間で読んだ本のうち、一番面白かったものです。個人的には「とうもろこしの章」が、「おあとがよろしいようで」のような章の終わり方で、『文章がうまいな』と感慨にふけってしまうような作品です。何よりも著者の知識の量と深さに驚かされる作品です。読んで得た知識をだれかにひけらかしたくなるくらい、情報量の詰まった良書です。

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