記事概要 昼間たかし・鈴木士郎氏共著の『東京23区教育格差』から、【東京都23区の学力差は縮まらない】という内容の参考になる部分を紹介していきます。
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区内格差の大きい区は
南北格差の激しい墨田区と北区
親世代の収入と学歴から、東京都23区には区ごとに違いがあることはわかった。しかし、もう少し細かく見ると、同じ区内でもこの差が変化する場所がある。まず挙げたいのが、親世代の収入が低いにもかわらず、子どもの成績ではまずまずの結果を出している北区である。
北区は、元々北部の王子区と南部の滝野川区という全く雰囲気の違う区が、戦後合併してできた区である。旧王子区は明治以降荒川沿いの工業地域として発展した地域であるが、滝野川地区は「駒込」エリアの高級住宅地だったのが戦前の姿。この境界線は、おおよそ王子を境にしており、街を歩くと確かにその違いは今も残っている。
墨田区にも同じような違いがある。墨田区は両国など、元々「江戸」の繁栄街だった南部エリアと、北部の「江戸の郊外」地域を含んでいる。この差も大きく、裕福な南部と新興住宅地である貧乏な北部という差が長く存在していた。
両区ともに、近年のマンション開発や鉄道網の整備などで状況は変化しつつある。特に墨田区では、東京スカイツリーの完成で、北部が一気に活性化した。しかし、街の雰囲気というものは一朝一夕に変わるものではない。
具体的に見てみよう。まずは北部。南部の滝野川エリアの大卒率は約20%。北部の浮間になると約17%と下がっている。しかし、同じ北部でも赤羽など繁華街のエリアは、滝野川以上の20%代中盤になる。これが田端になると約25%、田端新町では約36%となる。つまり、北部、南部で区切れば何歩が全体として優勢だが、それをさらに細かく見れば、北区内で圧倒的に高学歴者が多いのは田畑エリアとなる。
墨田区はどうだろう。両国エリアの大卒率は約25%であるが、スカイツリーのある押上は約20%。少なくとも学歴では、区内にかなりの差が存在している。
エリア格差の大きい江東区と大田区
北区や墨田区のように、なんとなく南北に差がある地域はわかりやすいが、この差がわかりづらいかも存在する。
その代表格が学力調査では下位に沈んでしまった大田区だ。
まず、大田区全域の大卒率は約23%とあまり高いとは言えない。杉並区は約33%、世田谷区は約28%と、かなりの差が存在する。
だが、これはあくまで区全体の話。高級住宅地として名高い田園調布は約41%と抜群に高く、千束、南久が原、嶺町エリアなど、30%を超える地区も数多い。この、親の学歴という観点からいえば、大田区には相当の地域差が存在している。
江東区も同じような状況だ。全体は約24%だが、豊洲では約39%、東雲は約30%、有明は約42%と露骨な差が出ている。子供の学力に影響する要素は、このように区単位でなくてももっと細かい地域単位で見る必要がありそうだ。
公立のレベルが高いのは中野区?
では、都心部以外で私立進学率も高いエリアの状況はどうなっているのだろうか。注目したいのが中野区だ。中野区は、小学校の学力調査では例年中位をさまよっており 、おおよそ平均レベルの学力である。しかし、国・私立進学率では28.7%と非常に高い数値となっており、約3割の「優秀な児童」が公立に行かない、という形になっている。しかし、中野区の公立中学校は例年10位前後と健闘しており、むしろ公立中学校がかなり健闘している、という結果だ。
教育不毛沿線はどこだ!?
東部エリアは全滅
筆頭には、京成、東武の私鉄2社沿線が挙げられてしまう。東武線がカバーするのは、板橋区、足立区。京成線は、足立区、葛飾区がその中心である。出発点である豊島区や台東区は、多数の路線が乗り入れるターミナル地域のためここでは省略する。
さて、東京23区において、子供の学力に影響する区ごとの環境の違いを考察してきた。結局、親が金持ちで学歴が高く、通学状況が良い地域は教育環境も良い、という身もふたもない結果となっている。
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