首都東京の中心、千代田区。学齢期の生徒の減少にともなう統廃合を経て、区内には麹町中と神田一橋中という2校の公立中学校と、区立の中等教育学校(中高一貫校)である九段中等教育学校があります。区立中学への進学には学校選択制が採用されていますが、「宿題は必要ない」「中間・期末テストやクラス担任は廃止」等の「おいしい話題」で、マスコミにたびたび紹介された麹町中学校への集中(偏り?)が著しいのが現実です。旗振り役演じた、教育委員会勤めの長かった工藤勇一校長は注目され、在学する生徒の満足度は高いとする報道もありますが、そこに勤務する教職員の本音は分かりません。過日の週刊誌に、名門中学の評定に「1」という記事がありました。生徒の評定に「1」が付いた原因(?)を校長の交代による経営方針の変更かというものでしたが、そもそも公立の中学で、生徒全員の9教科の評定に「1」が一つもない、つまり、皆無ということがありうるのでしょうか。「1」の付かない(?)学校であれば、入学しよう・入学させようとする生徒や保護者もいるのではないでしょうか。
なお、九段中等教育学校への進学には、千代田区在住者を対象とした適性検査(いわゆる入学試験、A区分80人)に合格する必要があります。前身が旧制東京市立第一中学校で、都立高から6年生の区立一貫校に衣替えした結果、著名な大学への進学実績が上向きましたが、A区分で入学した生徒とB区分(千代田区外の児童対象の80人)による生徒との間に、いくらかの学力差があるという話があります。また、嘘か誠か、学力不振の生徒には、いわゆる「肩たたき」があるといわれています。
東京都立日比谷高校を筆頭とする都立高勢が、東京大学合格者数の上位を占めていた時代に、「千代田区立番町小学校→千代田区立麹町中学校→東京都立日比谷高等学校→東京大学」という東大へのエリートコースが話題となりました。実際、日比谷高校の東大合格者が200人近かった時代に、50人を超える麹町中生が日比谷高校の門を毎年くぐっていたことを考えると、番町小から始まるエリートコースを歩んだ生徒も多かったかもしれません。
時代が変わり、都立高校に代わって国立大学附属高校や私立高校が、東京大学を頂点とする難関大学への合格数の上位を占めるようになると、麹町中・日比谷高校ルートは忘れ去られたものとなりました。しかし、定期テストの廃止や複数担任制など、麹町中学校の斬新で大胆な実践がマスコミで紹介されるにつれ、入学希望者が漸増し、越境入学を停止しています。同中学校から日比谷高校へは2年連続して5名が進学し、約600校の都内公立中の第一位となっています。2021年、日比谷高校から63名の東大合格者が出ていることを考えると、近い将来、「千代田区立番町小学校→千代田区立麹町中学校→東京都立日比谷高等学校→東京大学」コースが復活するかもしれません。
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