記事概要 公立学校の教員には人事異動制度があります。人事異動が行われる際に、教員は異動に関しての希望を出すことができますが、現実的な話、人事異動の希望は通らないということを解説していきます。
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東京都23区の中でも教育格差がある
東京都内には23の特別区と26の市がありますが、23区の間には教育環境や支援体制に格差があります。例えば、経済的に裕福な区(地域)では保護者の教育意識が高く、財源も潤沢で、学校運営が安定している傾向があります。一方、家庭環境が困難な児童が多い区では、学習支援や生活指導で教員の負担が増すケースが少なくありません。例えば、面倒見がよい生徒を指導するのと、人を信用することができず常に刃物を持っていないと落ち着かない生徒を指導するの、教員はどちらの生徒を指導したいと思うでしょうか。このような教育環境の違いが、教員にとっての働きやすさに影響を与えるのです。
こうした背景から、東京都23区内でも教員にとって「働きやすい」とされる区と「課題が多い」とされる区が明確に分かれています。教育格差が存在する中、より良い環境を求めて異動を希望する教員が多いのは自然なことです。しかし、その結果、特定の地域や学校に異動希望が集中することになります。
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多くの教員が異動を希望する区市町村がある
教員には、「この地域で働きたい」と具体的な異動希望を持つ人が多くいます。例えば、住民が比較的裕福で教育環境が整っている世田谷区や文京区などは、教員にとって人気の異動先です。これらの地域では他の区市町村等と比べると、生徒指導等がスムーズに進むため、教員が抱えるストレスが軽減されることが理由として挙げられます。
また、交通アクセスが良い区も人気の地域です。通勤時間が短縮されればプライベートの時間が確保でき、教員自身の生活の質も向上します。となるとやはり、交通網が発達しているより都心の学校が教員にとって好まれます。このように、教員の間で「働きやすい」と思われる地域が競争率の高い異動先です。
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倍率が上がるので異動希望は通りにくい
異動希望が集中する地域では、希望倍率が非常に高くなります。例えば、世田谷区や文京区と比べ、足立区や葛飾区など、比較的治安が悪いとされる地域への希望は相対的に少なくなります。この不均衡を解消するため、教育委員会は教員本人の希望だけでなく、学校の人員配置や地域の教育課題に応じて人事を行います。そのため、希望が通らないケースが多くなるのです。
特に、若手教員や異動歴の浅い教員には、希望が反映されにくい傾向があります。経験や実績が重視されるため、異動の希望を出しても、競争倍率の高い地域への異動は難しいのが現状です。希望が叶わず、働きたい地域に異動できない教員にとってはフラストレーションが溜まる一方、23区のどの地域でも質の高い教育を提供するには必要な仕組みとも言えます。
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総括
公立学校教員の人事異動は、教育環境の格差や希望者の集中により、希望どおりに進まないのが現状です。特定の地域への希望が集中する背景には、教員の働きやすさや教育環境の違いが大きく影響しています。しかし、教育委員会は学校間のバランスや地域課題を考慮して配置を決定するため、すべての希望を叶えることは難しい状況です。教員ひとりひとりの希望を尊重しながらも、地域間の教育格差を是正する取り組みが求められていると言えるでしょう。
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