記事概要 東京都港区の全公立中学校の修学旅行先が海外となることが先日発表されました。行き先がシンガポールということで、世間で話題となり、その賛否が報道されもしました。しかし、修学旅行先が海外ということでは、生徒数の増加は見込めないでしょう。
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参考
https://www.city.minato.tokyo.jp/houdou/kuse/koho/houdouhappyou/documents/yousiki2.pdf
東京都港区とそのイメージ
「港区」と言えば、一昔前であれば「東京タワーのある区」が主なイメージでした。現在は、「赤坂」「青山」「麻布」「六本木」「白金」「お台場」などの地名からしても、オシャレで高級な区というイメージでしょうか。実際、全国市区町村平均所得ランキングで毎年上位に位置し、外国の大使館も100を超え、有名芸能人が多く住むなど、他に例を見ない地域です。また、お金の印象から、「港区女子」という言葉も普及していきました。
港区立中学校の施設の実態
現在港区には、「御成門中学校」を始めとして、10校の区立中学校があります。「公立学校の施設や設備は私立学校にはかなわない」という話を聞きますが、港区ではどうでしょうか。
港区のお台場にある「港区立小中一貫教育校お台場学園」は、全館冷暖房完備です。学校施設開放が進み、区民も利用できることから、学校プールの水深は、膝までの深さからダイビング可能な深さまで調節が可能です。清掃工場に近いため、可燃ごみは専用のパイプに投げ込むだけでいつでも一気に処分できます。このように、私立学校に劣らない施設や設備、むしろ私立学校だけでは実現不可能な設備さえ備えています。
シンガポールへの修学旅行で、公立中学校の生徒数は回復するか
東京都内の公立中学校を例に挙げれば、修学旅行は3年生の春に、2泊3日の日程で実施されることが一般的です。大部分の学校は京都奈良を訪れますが、東北方面への修学旅行が盛んになった時代もありました。
さて修学旅行の準備ですが、旅行業者選びから、新幹線の日程希望、宿泊地の予約など、大枠の選定は中学1年次から始まります。しかし、港区の今後では、区立中学に進学すれば、3年後に格安で(?)シンガポールに修学旅行という流れとなります。もちろん格安と言っても、港区の税金から修学旅行用のお金が多分に出るのでしょうけれども。ところで、小学生やその保護者が、いつ、何を基準に小学校卒業後の進路を決断するかといえば、中学受験を意識した時点からでしょう。
「国際人育成に向けた取組の集大成の事業として実施し、区立中学校の魅力の向上にもつなげます。」という理由で、港区立中学校の中学3年生は修学旅行でシンガポールに行くことになりました。しかし、私立中学校受験を決めた児童や保護者は、公立中学は選択しません。公立中学校の修学旅行先がシンガポールであっても、旅行費用に多額の支援があっても、区立中学校の魅力が向上するようなことはなく、港区立中学校への進学者数は変わらないでしょう。
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