武士道の精神を持ち合わせた男たちの生きざま 『海賊と呼ばれた男 上下』【学校に置いてほしい本】

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海賊と呼ばれた男 上

海賊と呼ばれた男 下

著 百田尚樹 講談社

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概要

 
 『海賊と呼ばれた男』は、百田尚樹が書いた歴史経済小説です。出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした国岡鐡造(てつぞう)は、明治末期、石油の将来性を信じ、北九州の門司で石油卸売業を始めます。持ち前の発想の転換や行動力を用いて事業は右肩上がりでしたが、第二次世界大戦の敗戦により国岡商店のみならず日本は全てを失います。それでも、国岡鐡造は店員を大事にしながら再建に挑みます。石油事業を行うために国内外の利権や圧力に立ち向かい、石油メジャーと対決し、「日章丸事件」を引き起こしながらもイランからの石油輸入を成功させます。鐡造は人間尊重の信念を貫き、いつしか日本の石油業界に革命を起こす「海賊」と呼ばれる存在となりました。

国岡鐡造という漢

 『海賊と呼ばれた男』には、鐡造の信念や哲学を表す格言が数多く登場します。ここでは、その中から代表的なものを3つ選んで、その意味や背景を解説します。

愚痴をやめよ。 愚痴は泣きごとである。 亡国の声である。 婦女子の言であり、断じて男子のとらざるところである

 これは、作品の冒頭で鐡造が敗戦後の日本に対して発した言葉です。鐡造は、戦争で全てを失った日本人に対して、自己憐憫に陥らずに前向きに生きることを訴えます。鐡造は、愚痴や不平不満は日本の復興を妨げるものだと考えていました。鐡造は、日本人が困難に立ち向かう強さと誇りを持つべきだと主張します。この場面から、戦後の絶望の淵から希望を見出すために身を粉にして行動する鐡造の姿を読者は知っていきます。

武士の心を持って、商いせよ

 これは、鐡造が高校時代に校長から教えられた言葉です。鐡造は、商売人としても武士道の精神を忘れないことを心がけていました。鐡造は、商売は金儲けだけではなく、社会貢献や人間尊重も重要だと考えていました。鐡造は、商売においても信義や正義を貫くことを目指します。

皆が恐れるからこそ、行くのではないか

 これは、鐡造がイランから石油を輸入するために危険な航海に挑む決意をしたときに発した言葉です。鐡造は、他社が敬遠するような困難な仕事にも果敢に挑戦することで、石油業界に革命を起こそうとしました。鐡造は、リスクがあるからこそやりがいもあると考えていました。鐡造は、自分の夢や使命のために命懸けで戦うことを恐れませんでした。

出来の悪い社員を辞めさせ、すぐれた社員ばかりでやっていく、これを少数精鋭主義と呼んで尊重する風潮もあるが、そんなものは私に言わせれば、単なる利己主義である

 この格言は、国岡鐵造が自分の会社の経営方針を語ったものです。彼は、人材育成に力を入れており、出来の悪い社員も辞めさせずに教育していました。彼は、自分の利益だけを追求するのではなく、社員や社会に貢献することを目指していました。

「たとえ99人の馬鹿がいても、正義を貫くひとりがいれば、けっして間違った世の中にはならない。そういう男がひとりもいなくなったときこそ、日本は終わる」

 この格言は、国岡鐵造が石油業界の不正や圧力に屈しなかったことを示すものです。彼は、日本の石油安定供給を守るために、アメリカやイランと契約を結んだり、自前のタンカーを建造したりしました。彼は、多数派に従うのではなく、自分の信念に従って行動しました。

補足

 『海賊と呼ばれた男』史実に基づいて語られている物語ではありますが、逐一補足の情報を入れてくれるので、内容が理解できなくなるようなことはほとんどないです。ただ、上下巻で一冊350ページ以上あるので、かなりボリューム感がある小説です。ただ、本書を読むことで、日本人としての誇りを感じることでしょう。

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