将来のための、公立中学校か私立中学校かの選択(『ハムレット』のせりふより)
受験(受検)に伴う欠席
東京都心の多くの小学校では、2月の第1週には6年生の児童が集団で欠席するという状況が見られます。この状況は、私立中学校や公立の中等学校(中高一貫校)受験に伴って発生するものです。東京23区内の小学6年生の進学先を調べると、約25パーセントが私立中学に、比較的富裕層の多い港区や千代田区、教育熱の高い文京区などでは、約50パーセントの児童が、地元の公立中学校ではなく、東京都内外の私立中学校に進学・入学しています。
中学校の3年間は義務教育期間ですので、たとえ受験をしなくとも、中学校に進学することはできます。しかし、希望する学校に入学できるよう、多くの自治体で公立中学校の選択制が実施されているにもかかわらず、長い時間や多額の費用をかけて私立中学校を受験する(させる)のはなぜでしょうか。
要するに、高学歴や有名大学卒業が、将来の出世や高収入につながるという希望や期待で、私立や国立大学の附属、都道府県立の中等学校(要するに公立の中高一貫校)への進学を目指すのでしょう。
では、私立中学校に入学できれば、将来の全てがうまくいくかといえば、必ずしもそうではありません。人間関係はもちろん、授業の内容や進度になじめず、通学を断念するケースもあります。けれど、中学3年間は義務教育期間ですので、基本的にはいずれかの私立中学や地元の公立中学に在学しなければなりません。世間体や転校への不安など、さまざまな理由で不登校となる生徒もいます。
公立中学校を擁護するわけではありませんが、公立中の大部分の教員はかなり優秀です。また、エアコンの設置状況を始めとして、学校施設も学習するための機器などもかなり整備されています。コロナ以降は、生徒にも教員にも一人一台タブレット端末を支給し、学習がストップするリスクを最小限にしました。資金力に勝る私立中学校には、設備投資の面で適わないかもしれませんが、公立中学校でもそこそこの教育環境が整っていることも事実です。
しかし、子どもをもつ親に、「中学受験をしたほうが、将来の出世や高収入につながる」という考えが一般化しているのであれば、貧富の差や教育の格差は永遠に縮まりません。「公立中学校は私立中学校や公立中高一貫校の下位互換?」という認識がある限り、公立中学校に通う子どもたちには永遠に敗者のレッテルを張られてしまうのではないでしょうか。出世や高収入だけが人生の目的ではないでしょう。「中学校受験に失敗したら公立中学校に通う」というような風潮が、日本の未来の繁栄につながるかは、甚だ疑問です。
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