記事概要 昨今の公立学校教員の仕事には、労働時間が長いとか、ブラックといった印象がつきまといます。難しい話ではありますが、公立学校教員の業務の公立可を図れそうな改善案を紹介していきます。今回は学習指導要領は本当に必要なのかということを解説しています。
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学習指導要領とは
教職に身を置く者、要するに教員として、しばしば耳にする「学習指導要領」なる存在。国内の小学校、中学校、高校が自校の教育課程(カリキュラム)を作成する際の基準となるものですが、総則や各教科を精読している教員はどれほどいるでしょうか。
そもそも学習指導要領の誕生は、第二次世界大戦後の昭和22年に遡ります。その後、ほぼ10年ごとに改訂され、現行の特徴(売り)は、「社会に開かれた教育課程」「主体的・対話的で深い学び」ですが、分かったようで分からないような気がしてなりません。
「学習指導要領」という「紋所」
古(いにしえ)のテレビドラマ、『水戸黄門』を見たことがあるでしょうか。悪人を成敗する黄門様一行の強いこと強いこと。そして、抵抗を続ける悪人へのダメ押しとして、「この紋所が目に入らぬか」というせりふとともに、葵の紋が描かれた印籠が出されると、「ははー」とその場の皆が平伏し、一件落着となります。
古の徳川将軍家の紋所と似たような権威や威力が、学習指導要領にもいつの間にか備わるようになりました。たとえば、授業の一単位時間は、小学校では45分間、中学・高校では50分間と示されていますが、以前の中学校では、40分、45分で行う「短縮授業」が実施されることがありました。しかし、「学習指導要領」という紋所により、「短縮授業」は許されなくなりました。
また、各教科の年間授業数の確保が求められた結果、さまざまな学校行事が削減されたり、始業式や終業式という儀式的行事の日にも授業が行われたりするようになりました。時代の要請か、「標準」とされる学習指導要領に示された数字が、気が付けば「最低限」とされるようになりました。
昨今の気がかりは、教科の学習指導案に学習指導要領の孫引きが多いこと。学習指導用要領と書けば、万事が丸く収まるという風潮が窺えます。そして、つい先日には、ある国立大学附属学校で、学習指導要領に示された学習が行われていなかったという報道がありました。それへの戒めか、異例の人事異動があったと伝えられますが、事実であれば残念なことです。
バイバイ、学習指導要領
「エンカレッジ スクール」という高校が東京都にはあります。小学校、中学校で本領を発揮できずにいた生徒を勇気づけ、意欲を向上させることを目標とした教育活動を行っています。その一つに30分授業があります。また、小学校では45分間、中学・高校では50分間という単位時間の短縮を認めるという報道もありました。
学習指導要領を弾力的に運用することが、「バイバイ、ブラックな学校」につながるかもしれません。
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