甘い言葉にご用心 『蒼氓』 【学校に置いてほしい本】

スポンサーリンク

『蒼氓』 石川 達三

スポンサーリンク

始めに

 『蒼氓』。失礼を承知でお尋ねしますが、この書名、読めますか。「第1回芥川賞受賞作」というヒントで「ソウボウ」が思い浮かぶあなたは、かなりの読書家でしょう。なお、語義は「民」または「人」。

 新人小説家の登竜門とされる「芥川龍之介賞(通称は『芥川賞』)」は昭和10年、文藝春秋社の当時の社長である小説家、菊池 寛によって創設されました。ちなみに、正賞は懐中時計、副賞は100万円です。

 年に2度行われる芥川賞、そして、直木賞の選考は、その候補作(者)が決まった段階で大きく注目されますが、受賞作や受賞者がテレビや新聞等で大きく紹介されるのは風物詩ともいえます。受賞作が月間『文藝春秋』に掲載されるのは、言わずもがなですが、直木賞受賞作は、『オール讀物』に掲載されます。

概要

 『蒼氓』は、国からの募集に応じ、移民としてブラジルに渡る人々を描いた小説です。日本人の海外移住の歴史をインターネット等で検索すると、「明治元年に……」等の結果が得られます。けれど、社会科の授業を思い返せば、室町時代にはタイをはじめとして東南アジアの各地に日本人町がありましたから、海外移住の歴史はかなり長いものと考えられます。

 では、明治以降の海外移民と日本人町への移住には、どのような違いがあるでしょうか。海外に活路を見出そうという点では、どちらも変わりはないでしょう。けれど、官による海外移民には、甘い言葉の陰に不況や失業対策が見え隠れします。

 主人公の孫市やその姉お夏など、地方出身の農民たちが目指す希望の地・ブラジルでは、どのような未来が開けるでしょうか。

良さ

 
 中華人民共和国に追い抜かれてとはいえ、GDP(国民経済計算)が世界第3位の我が国。けれど、第一次大戦後の大正期や昭和初期の日本経済は厳しい状況にありました。豊かで清潔な国に生まれつき、それを当然なこととして暮らしていると、日本の過去の姿は目にくくなるものです。『蒼氓』を読むことで当時の全てが分かるわけではありませんが、藁にもすがろうとする人の必死さが味わえることでしょう。

まとめ

 150万人もの日系人が暮らすブラジル。日本人の移民は明治41年(1908年)に始まりますが、第一世代からの労苦や努力が実り、日系人のステイタスは高いと聞きます。今でさえ、航空機を利用しても到着までに20時間以上を要する南米諸国。言葉は通じず、習慣の大きく異なる異郷に向かう姿に心が打たれます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました