雨だれ石を穿つ 『恩讐の彼方に』 菊池 寛 【学校においてほしい本】

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『恩讐の彼方に』 菊池 寛  

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始めに 

 若手小説家の登竜門となる機会として、「芥川龍之介賞(芥川賞)」、「直木三十五賞(直木賞)」の創設に尽力した菊池寛は、人気作家でありながら、出版社や映画会社の社長や競走馬の馬主を務めた異色の人物です。『形』という菊池の短編小説を国語の授業で学んだ方がいるかもしれませんが、近年人気を博した昼間のテレビドラマ、『真珠婦人』も菊池の作品です。ちなみに、私Garudaは一度も見ていません。ただしこちらは、芥川賞受賞作のような「純文学」に対し、「通俗小説」と呼ばれていますので、純文学の創設者にはそぐわない作品かもしれません。

概要 

 時代は江戸末期。主人公・市九郎は中川三郎兵衛という旗本に仕えていましたが、刃傷沙汰から三郎兵衛を殺(あや)めてしまいます。江戸を離れざるを得なかった市九郎は、表では峠の茶屋を営み、裏では旅人に災いをなすという日々を送ります。けれど、そうした生活を恥じた市九郎は、出家して了海を名乗ります。

 人々の役に立ちたいと諸国の行脚に出た了海は、通行人が命を落とすことのある交通の難所に通りかかります。場所は、九州大分の山深い耶馬渓。了海は思案の末、安全な通路となるトンネルを掘ることを決意します。大岩に一人で鑿(のみ)をふるう了海。座して早朝から深夜まで、いつ成就するかもしれない作業が続きます。

 そこへ、市九郎を追い、父・三郎兵衛の仇を討とうとしていた実之助が現れます。さて、三郎兵衛との対面を果たした実之介の下した判断と行動とは。

良さ 

 ストーリーが単純明快で、誰にも読みやすい小説です。悪行をはたらいた主人公が改心し、仏門に帰依し、世のため人のためと尽力する姿は尊いものです。

 親の敵を探し出した実之助に、毅然として命を差し出す市九郎。先の読み解ける展開かもしれませんが、「なるほどな」や「やっぱり」と感じさせるところも、『恩讐の彼方に』の良さの一つでしょう。
   

まとめ

 和歌に読み込まれた地名や名所旧跡を主に意味する、「歌枕」という語があります。了海(実際は禅海和尚)が掘り進めたトンネルは、「青の洞門」として知られ、長く観光名所とされています。『恩讐の彼方に』の出版で脚光を浴びたことから、小説版の「歌枕」といえるかもしれません。

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