デパートにはいつ行くの? もちろん…… 『デパートへ行こう』 【学校においてほしい本】

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『デパートへ行こう』 真保 裕一

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始めに

 この書評を読んでくださる賢明な方々には「釈迦に説法」ですが、わが国には、「ハレ(晴れ)」と「ケ(穢れ)」という考えが古くからあり、ハレの日に身につけるのが「晴れ着」だと教えられ、深く感心し、納得したことを今なお覚えています。

 現在からは想像できないでしょうが、昭和の中頃、皆が未だ貧しい時代では、「普段着」と「よそいき(よそゆき・晴れ着)」があり、特別な場所に行くときのみ、「よそいき」が許されました。書評司にとっては、特別な場所の一つがデパートで、一着きりの「粗末なよそいき」に着替え、バスや電車に乗って出掛けることは胸躍る一瞬でした。

 何も買ってはもらえませんでしたが。

概要

 廉価な物品から高額商品まで「百貨」を定価で商う日本のデパート。トイレや休憩所代わりとして一時的に利用する人もいますが、多くの客は評価の定まった商品を求めて訪れます。デパートの包装紙や手提げ袋は、一種のステータスシンボルでした。

 さて、『デパートへ行こう』の登場人物は、さまざまな目的や意図をもってデパートには行きますが、それは正に「侵入する」にふさわしいもので、お目当ての商品を探したり購入したりするわけではありません。

 さて、主な舞台は終業後の百貨店。小説の最初に現れる「加治川」は、デパートに書評司と同様の思いを抱く人物です。続いて、従業員である「山添」には、周到に計画された大胆な計画があります。そして、家出人である「コーちゃんとユカ」。さらに、深い傷を負った「塚原」。加えて、……。警備員以外は存在しないはずの闇夜のデパートで、思いもよらぬ事態が展開します。

良さ

 「おもしろかった」「読んでよかった」と感じること請け合いの小説です。登場人物が主体となる章が積み重なっての構成ですので、一息つきながら600ページを読み進めることができます。登場人物が暗中模索する中、一人一人の人間関係や人生の背景を知る私たち読者は、助け舟を出したくなったり、声援を送りたくなったりします。ついつい物語に引き込まれてしまうことが、『デパートへ行こう』を手にする良さでしょう。

まとめ

 綿密な下調べの基に著される、真保 裕一さんの数々の小説。江戸川乱歩賞を受賞するミステリー作家としてスタートしますが、『デパートへ行こう』のようなエンターテインメント小説も手掛けています。一冊読むと、ついついもう一冊となるかもしれません。

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