『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』
概要
2009年、新型インフルエンザが猛威を振るった。予防接種などの対策もなく、アメリカの疾病予防管理センターはなすすべがなかった。そこで解決のメスを入れたのが、今や知らない人はいないグーグルである。グーグルは米国人の検索時に入力した言葉のうち、上位5000万件を抽出した。さらに、「咳の薬」や「解熱剤」など特定のキーワードや数式モデル、位置情報などの相関関係と組み合わせることで、疾病予防管理センターよりもリアルタイムで迅速に効果的な対応を生み出した。
長年、公衆衛生のために尽力を尽くしてきた疾病予防管理センターよりも、何の経歴もないグーグルが、有効な感染症対策を生み出した。このグーグルがインフルエンザ対策に用いたのが、検索ワードや数式など、解析するための様々な「ビッグデータ」である。この例はグーグルがビッグデータを用いて公衆衛生に貢献した例ではあるが、ビッグデータを用いてよい影響を与えた例は枚挙にいとまがない。本書では、これからもさらに影響力を増していくであろう「ビッグデータ」について語った作品である。
既存の概念をぶち壊すビッグデータ
人類は、何事にも因果関係を求める生き物である。たくさん勉強したから、成績が上がった、天気が悪いから頭が痛い。人は何事にも理由を求めてしまうのである。しかしながら、ビッグデータはその考えを覆す。ビッグデータの考え方は、「圧倒的な結果の量があるから、それを元に行動する」というものである。その結果の理由には触れない。「とにかくこういう事実がたくさんある」ということを現況に参考にし、原因や理由はあってもなくてもよい。ただ、その事実を圧倒的な量で補うことで、因果関係をもとにした事実を凌駕することができる。これがビッグデータである。
ビッグデータがこれからの世界でさらに影響を発揮し、人類が多大な恩恵を受けることは間違いないであろう。しかし、因果関係を捨て、ビッグデータの情報だけを参考にするようになると、様々な危険を伴う。ビッグデータを所有する人間が、都合のいいようにビッグデータを書き換えることも可能であるし、ビッグデータを利用することによって、個人のプライバシーをさらすことになる可能性も出てくる。本書にある通り、しまいにはジョージオーウェルの1984の世界や、映画マイノリティ・リポートのような世界になりかねない。
時代が進むにつれ、ビッグデータの影響力は増す。恩恵もたくさん受けるが、個人が身を守るためにも、ビッグデータの知識を入れておかなければならない。
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